流れる星は生きている

古い本なんですが、藤原ていという方が書いたこの本、戦後空前のベストセラーと呼ばれている本だそうで読んでみました。
流れる星は生きている (中公文庫)
藤原ていの子供は「国家の品格」がベストセラーとなった数学者の藤原正彦。そして旦那さんは作家の新田次郎
藤原一家は満州に住んでいたときに、急遽、引揚者となり、満州から北朝鮮、38度線を越えて韓国に入り、日本へ帰国したまでの実体験を小説化したもの。引き揚げの時は旦那さんと別れ離れとなり、ていがまだ幼い3人の子供を引き連れて、死に物狂いで帰国したその厳しい状況がこの本に詳細に書かれており、想像を絶するほどの過酷な状況で、次から次へと起こる出来事のおかげで、一気に読み進めることができました。
引き揚げでの著名人は、森繁久彌櫻井よしこ赤塚不二夫五木寛之などがおり、苦労をしたためか、実力者の方が多いです。
私がこの本を知ったきっかけは、藤原正彦氏の本「日本人の矜持」という対談集の中で、藤原氏五木寛之氏が対談していた場面です。
それにしても、この本での状況は壮絶。そして、母親のパワーは凄い。ほとんど飲まず食わずで移動する途中、背負う子供にあげる乳も出ないため、大豆の汁を口移しで赤ちゃんに上げるシーンや、裸足で歩き続けるため、足の裏には石が食い込み化膿したり、正彦が疲労困憊で死に掛けたり、次々に周りの子供が死んでいったり、路上で死に絶えた老人が、そのまま放置されていたりなど、地獄のような有様です。今は子供の虐待や、育児放棄などのニュースが多い世の中ですが、引き揚げの地獄のような状況でも、我が子を何とか助けようとする親の存在を知ると、この差はいったい何なんだ?と理解に苦しむばかりです。ちなみにこの藤原ていさんは、今は90歳を超える高齢ですが、認知症ながらも余生を過ごしているそうです。
有名な本なので、すでに読まれている方は多いかと思いますが、まだの方は是非チェックを。